こんにちは! プロダクト開発部の施設内ドキュメントチームでPdMを担当している向井です。
株式会社コドモンは、保育施設の業務をICTで支援するICTサービス「コドモン」を運営し、現在では全国の多くの施設に導入いただいています。また、園探しや見学予約を支援する「ホイシル」、保育士の学びを支える「コドモンカレッジ」、物品・写真販売などを行なう「コドモンストア」など、保育・子育て支援の現場を多角的に支える複数のプロダクトを展開しています。
僕はこれまで、「ホイシル」のPdMとしてフェーズの若いプロダクトに携わり、現在は、「コドモン」の一部機能を担当するPdMとして成熟プロダクトに向き合っています。 この記事では、フェーズの異なるプロダクトに関わってきたからこそ感じたことや、そこから見えてきた僕自身の考え方・取り組みについて紹介してみたいと思います。
若いプロダクトと向き合った日々
僕がコドモンに入社したのは2023年3月。最初に関わったのは、園見学予約サービス「ホイシル」でした。立ち上げフェーズは終えていましたが、まだPMF(プロダクトマーケットフィット)直前で、プロダクトとしてはすごく若い状態。ユーザーの声を聞きながら改善の手数をどんどん回していくようなフェーズでした。
新規事業のPdMとして、日々の判断スピードや仮説検証の精度を高めていくことに必死で、手を動かすことに意味がある感覚の強い日々でしたね。とにかく思考と実装と振り返りのサイクルを早く回す。その積み重ねがプロダクトの進化につながるのを実感できた経験は、今の僕の土台になっています。
社会インフラのPdMという役割
2024年12月には、施設が扱う園児台帳や指導案、日誌などの帳票作成・管理機能を中心とした施設内ドキュメントチームに異動しました。ホイシルとは真逆で、こちらはすでに全国の保育施設で日常的に使われている、いわば社会インフラのようなプロダクトです。
この領域では、スピードよりも丁寧さが大事です。ちょっとした仕様変更が、数千の施設に影響を与えることもあります。たとえば、表記やボタンの配置ひとつとっても、少しの違いで操作を誤ってしまう先生方がいます。仕様を検討する際には、施設の規模や種別はもちろん、利用するのが本部の方なのか現場の先生なのか。さらに、園長先生なのか担任の先生なのか。他機能との整合性は保たれているか。こうした複数の視点を地道にすり合わせていくことで、はじめて誰にとっても「使いやすい」と感じてもらえるプロダクトになると感じています。だからこそ、ユーザーにとっての使いやすさや安心感を一つひとつ積み上げ、信頼を重ねていく必要があるのです。
異動して最初に取り組んだのは、ユーザー目線でプロダクトを触ってみることでした。実際に触れてみて「なるほど、これは確かに問い合わせが増えるな……」と感じたのを今でも覚えています。僕の異動時期は、これから新年度の準備を始める施設の方々の問い合わせをいかに起こさないようにするかが課題の1つでした。そんな中、特に年度末のクラス設定の画面が複雑で、操作が難しかったんです。
その後、問い合わせ履歴を分析すると、「年度替わりの設定が難しい」「操作ミスが多い」といった具体的な問題が明確になりました。すぐにUIや手順の見直しを行った結果、同様の問い合わせを前年比で減らすことができました。「初心者だからこそ見えた課題が本当にある」と確信できた瞬間でした。
ホイシル時代のスキルをICTサービスにも活かす
ホイシルのPdM時代から僕がずっと大切にしていることは、「まず全体像を掴むこと」です。施設内ドキュメントチームでは、保育現場で使われる年間指導計画や月案・週案、そして日誌など多種多様な帳票があります。それらのつながりがどうなっているか、まずは帳票間の相関図をつくって整理しました。
すると、帳票間で同じ情報を何度も転記する手間が多いことに気づきました。加えて、計画の承認や職員同士の振り返りといった、帳票を組織のタテとヨコに共有する仕組みが弱いことも見えてきました。この課題を解決できれば、先生方が子どもたちに向き合う時間をもっと増やせる。ホイシル時代に磨いた仮説検証のスキルが、ICTサービスでも役に立ったと感じられました。
ステークホルダー調整の難しさと「元気玉作戦」
また、異動して直面したのは、多くのステークホルダーとの調整です。開発はもちろん営業、カスタマーサクセス、法務まで、関係者が多いICTサービスでの調整と意思決定は独特の技術を要すると感じました。
僕がいつも気をつけているのは、対立構造を作らないことです。意見が衝突するときは、「僕たちは何のためにこれをやるんだっけ?」と目的を抽象化して再確認します。
また、新しい価値を生む企画を進めるときは、関係者全員を巻き込んで勢いを作ることが重要です。僕はこれを「元気玉作戦」と呼んでいます。「この施策に期待すること・進めるうえで気になること・いつまでにどうしたいか」を各自で言語化し認識を揃えたうえで、みんなの力や知恵を集める。そうして問題解決したり決議を通すことで、関わるみなさんが活性化し、自分ごと化して取り組むことができておすすめです。
データ活用でもっと保育の質を高めたい
入社当初から僕が興味を持っているのが「コドモンが持つユニークなデータを、保育の質向上に活かす」ことです。僕は以前、POSデータや行動ログを使ったマーケティングの仕事をしていた経験があって、その視点で見てもコドモンがお預かりしているデータは本当に価値があると感じています。
もちろん、子ども・保護者・先生方の大切な記録ですから、扱いには慎重であるべきだし、関係者からの理解と納得が大前提です。そのうえで、もっとデータを活かすことで、現場の保育の省力化のみならず、関わるみなさま一人ひとりにフィットした保育が実現できるのではと考えています。
たとえば、
連絡帳のやり取りを分析して、保護者の不安傾向に早く気づいて、フォローのタイミングを逃さないようにする
活動記録から園児/児童の興味・関心を見つけて、その子に合った遊びや学びを提案する
体調記録から発熱の兆しを早期に察知して、感染症予防の声かけを先回りして行なう
こういった取り組みは以前から可能性としてはあったものの、近年の生成AIの進化によって、より現実的で実装しやすいフェーズに入ってきたと感じています。
もちろん、技術に対する不安や懸念もあると思いますし、そういった声を丁寧に受け止めながらではありますが、テクノロジーが先生方や保護者の心強い味方になる価値を模索していくことには、これからも積極的にチャレンジしていきたいと思っています。
「届けたい価値」は、安心して子どもと向き合える時間
異動して半年が経ち、日々プロダクトと向き合う中で、僕がコドモンで本当に届けたい価値がより明確になってきました。
それは、「先生たちが安心して、子どもとちゃんと向き合える時間をつくること」です。
この想いの背景には、個人的な原体験があります。わが家には2歳違いの子どもがいて、8年にわたり保育園でお世話になりました。0〜6歳という大切な時期を、長時間にわたって保育していただくというのは、まさに「第二の我が家」のような存在だったと感じています。子どもの育ちに深く関わってくださったことへの感謝の気持ちは今でも強く残っています。
一方で、お迎えのときに目にした光景が忘れられません。その日の活動報告が、A4のボードにびっしりと手書きでまとめられて掲示されていたんです。先生方が何十人もの子どもを見ながら、毎日その日の気づきや驚きを記録していたことに、尊敬の念を抱きました。でも同時に、お迎えに来た親が代わる代わるそれをスマホで撮って帰る姿を見たとき、「これって最初からスマホに届いていたっていいんじゃないか?」とも思ったんです。
業務量が多く、人手不足とも言われる保育現場。記録の重要性はそのままに、ITを活用して先生方がより本質的な保育に集中できるような世界をつくれたら――その想いが、僕がこの仕事に向き合う大きな原動力になっています。
だからこそ僕は、プロダクトを改善して、操作がしやすくなったり、問い合わせが減ったり、記録作業の手間が減ったりすることで、先生方の気持ちや時間に余白が生まれることを目指しています。その余白が、子どもへのまなざしや関わりの丁寧さにつながり、子どもたちの育ちと学びを支えると信じています。
また、僕が働くうえで大切にしているのは、「何をやるか」以上に「誰とやるか」です。
役割に閉じた仕事ではなく、「なぜこのプロダクトを育てるのか?」という目的から理想を描いていくと、仕事の幅は自然と広がっていきますし、ただ与えられたものをこなすのではなく、自分自身の中からやるべきことが生まれてくるようになると感じています。
そうしたマインドや行動原理を持ったメンバーとのコラボレーションは、1人では到底届かない成果を生み出すことがあります。実際、そういう瞬間に立ち会えたときは、自分のキャリアにとっても、もっと言えば人生にとっても、とても大きな意味を持つものになると実感しています。
だからこそ、この思いに共感してくれる人と、ぜひ一緒にいい仕事がしたいと思っています。
もしこの記事を読んで少しでも興味を持ってもらえたら、ぜひ気軽に話しましょう。お会いできるのを楽しみにしています!